スランプ対策|クリエイターを成功させる感性が、翌日に自身を苦しめる
2013年05月29日 公開

よく耳にする言葉のうち、デザイナー、ウェブデザイナー、イラストレーター、作家といったいわゆるクリエイターと呼ばれる人達に共通する事として、度をこしたスランプ、もしくはプレッシャーというものがあります。
また、どうやったらあんな素晴らしいものが書けるのか、どうやったらこんなに心踊るデザインを作れるのか、どうやったらあんな素晴らしいシナリオを作れるのか。そんな周囲からの当たり前のように発せられる声が、いつのまにかプレッシャーとなり、心身ともに疲労する。そんなクリエイターをよく見かけます。
はたして彼らを悩ませ、彼らを救うものはなんなのか。どうやってこうしたストレスからくるスランプを抜け、次の作品に活かせるのか。今回はそんなテーマで考えて行きたい。
風を捉え、風に身を任せる
ある時、KDDIウェブコミュニケーションズの取締役副社長の高畑さんと、居酒屋でしっぽりと語り合う機会が有りました。
その時に、ネタやアイデアの誕生について話していると、アイデアがふっと浮かぶ瞬間が確かにあり、そしてそれを呼び込む為の一定の習慣があるといった話になりました。
確かに。
高畑さんの場合、電車の窓から外を見ている時、私の場合、チュッパチャップスを舐めている時。
さて、このなんとも言えない突如やってくるアイデアを私は風と表現しています。
それは突然やってきて、そしてあっという間にアイデアを残し、過ぎ去っていきます。
勿論この時、この風を何としても捉えなければ、この先どれだけ思い出そうとしても、2度と同じアイデアが浮かばない事がほとんどです。
もしもブロガーやマーケター、クリエイターと呼ばれる人種がこよなくEvernoteを愛する理由があるならば、こうした一瞬のアイデアを、どこからでもログに残すことができるからだと私は考えています。
勿論、一定の行動がアイデアを呼び込むには、そこでは一定のルールがあります。
コレについては人それぞれだと思いますが、私の場合はチュッパチャップスを舐めながら人のサイトをみてまわる事です。また、呼び込む動作や行動を完全に無視して、いきなり台風のように風が通り過ぎることもあります。
お風呂でゆったりしている時にやってきて、良いひらめきをさせておきながら、お風呂から上がる頃にはもう覚えていないといった事も多々あります。
非現実的ではありますが、まるでこれでは神の声ではないかと考えることもありました。
それは気まぐれであり、こない時は全くこない。
しかし、確かに良いアイデアを形にすれば、それは自ずと良い結果を生み出してくれます。
こんな時、誰もが思います。
あの人は本当に目の付け所が違う、よくそんな事を思いつきますね。
感性が違う。あの人の感性には追いつけない。
センスがある。センスの問題だ。
ブロガーになってよく言われるのは切り口が斬新、面白いといった言葉です。
果たしてこうした成功は特別なものなのでしょうか。
センスとは努力ではないか?
以前記事にした記憶もあるのですが、人の感性とは、その人が経験した事以上の事は生まれないという絶対条件があります。
つまり、どれほど優れたアイデアを形に出来る発想が浮かんでも、それはその人がこれまで学んできたことの集大成であるということです。
ちょっとだけものの見方を変えたり、経験と経験を合わせたり、比較したりした結果、別のものが生まれると言うこと。と言うことは、結局は神の声でもなんでもなく、その人が生きた証であり、それまでの人生が導き出したアイデアであることに違いがありません。
デザイナーはセンスがあると言われても、きちんとした裏付けによって作品を作る人は多いのです。
それはデザインについて学んだ結果であり、日々多くのデザインを見て、さらにはそのデザインが何故良かったのかを言葉に出来る人も少なくありません。
人はそんな見えない努力を評価はせず、ほとんどと言っていいほど天才やセンスという不確かな言葉を使い、自分を強引に納得させます。自分にはセンスがないという言い訳のほとんどは、ただの勉強不足だったという事をごまかすためでもあります。
しかし、それを完全に受け入れてしまうと、とてつもなく大きなプレッシャーが発生します。
その正体とは、高い評価を受けた後の作品を作る時に発生するストレスの根源。場合によってはスランプとも表現出来ます。
つまり、人は過去の自分の感性に追い詰められ、そして身動きが取れなくなっていくと言うことです。
心の心配をされる職業
良い作品を出した人は、次の作品を心配されます。
前より良いものがまた出されるに違いないといった、周囲の期待感に対するプレッシャーもあるかと思います。
漫画家の知り合いがいますが、いつもこう言われるそうです。
「なんか締め切りとかに追われてストレスとか大丈夫?」
普通なら、仕事大丈夫?と聞かれる事はありません。
殆どの場合、仕事の調子どう?と聞かれます。
精神的な心配をされる職業、それがクリエイターの方々だと言えます。
さて、では実際どれくらいのストレスなのか。
著名人において自殺した方526人中、作家が特に多く、38人。
画家、詩人、ミュージシャン、漫画家を合わせると実に93人がクリエイティブな職についており、その割合17%。
こうしたストレスに何らかの解決方法はないものか。
見つかりました。
創造性を阻害されないために、そしてストレスにしないために
聞くとコレまで感じていたことと全てにおいて共感できる点が多く、そしてこれによって救われた気がしました。
ネタを作る時なんかは、確かに得体のしれない突然訪れるひらめきに関しては同じように感じます。
その上で、それらを自分自身が生み出したものではなく、別の要因であると考えること。それこそ神のお告げととらえても良いということ。
そして、
ここがもっとも重要なポイントだと思いますが、「自分の役割はしっかり果たす」という事。
自分がするべき事をしっかりとする。
そこに良いアイデアが生まれなければ、それは自分のせいではない。そういった心の救済を持つべきであると彼女は語ります。
そこに創造性を育む大きなヒントがあると。
なるほど確かにと思いました。
自分の役割は決まっています。それが私の仕事でもあるのだから、アイデアを生み出すためにチュッパチャップスを舐め、風を待ちます。しかし、そこに素晴らしいものが見つからなくても、自分がやるべきことは、粛々とやっていけば良い、そう言われているようで、とても感慨深いものを感じました。
また、自分の役割を果たさなければ、良いアイデアがそもそも生まれないのも知っています。
皆さんの中に現在、何かしらの要因によってスランプに陥っている、なんらかの見えないプレッシャーを受けている。そんな方がいましたら、是非今一度自分の役割を客観的に分析してみてください。
そうして粛々と、するべきことを積み重ねてみましょう。
自ずと毎日するべきことが見えてくるかもしれませんよ。
それでは、また。