インターネット炎上鎮火マニュアル2019
2019年06月07日 公開

ちなみに炎上鎮火なんて言う商売はしていませんが、知り合いの社長に頼まれて対応したのは過去に4件ほどしかありません。
私も別に炎上を回避させる専門家ではありませんので、はっきりとした解決方法とまでは言いません。
ただ、もしもの時の対応に参考になればと思います。
やってはいけない事
- たとえ事実でも、証明できない事は言及しない
- 法律上クリアしていないなら言及しない
- 法律上クリアしている事をアピールしてはならない
まず炎上とは、対個人との戦いではありません。また、世論との戦いですらありません。
炎上してしまっている以上、もはや世論との「調整」になります。
実態が無い相手と戦って勝てるわけがないので、あくまでも「調整」が最終的なゴールとなります。
その中で、最もやってはいけない悪手、それが上記の3つです。
特にこの3つに関しては、弁護士に相談した企業がすぐにやりがちな対応と呼ばれており、やればさらに炎上します。炎上すると、どうしてもそれを鎮火しようとついつい言葉が出てしまいます。
炎上させている世論は感情の塊です。
そして人間とは感情の生き物なので、感情でこられるとどうしても感情的になってついつい反応してしまうのです。
これは心理学ではなく生物学の問題なので(サイモンシネックのゴールデンサークル参照)炎上すると我慢できず言葉を発してしまうのですが、これが炎上を大炎上させる一番の悪手である事をまず、炎上する前に頭に叩き込んでおいてください。
その上で上記3つを注意してください。
1)たとえ事実でも証明できない事は言及してはならない
例えば社内で社長がセクハラをしている恐れがありますと、なにかが原因で外部に漏れて、世論が炎上してしまったとします。
しかし、社長は完全に白。
全くもってそのような事実は無いとします。
つまり、「セクハラをしていないという事実」は間違いないと社長は断言できますよね。
ところが、セクハラをしていない事実を言葉だけで証明する事は出来ません。不可能に近いです。
いくらしていないといっても、たとえやっていないという事実であっても、証明できないことに対して言及すると、激しく炎上します。
なので、証明出来ない事を公開するくらいなら黙りましょう。
2)法律上クリアしていないなら言及しない
会社の中では、パワハラ、セクハラ、サビ残等、日常的に行われている違法行為というのが驚くほど沢山あります。
ありすぎて日常化しているため、それを常識とまで考えている社長も沢山います。
例えば2019年から有給を5日以上取らせる事が義務化されましたが、そんなこと知りませんという社長もまだいます。
もちろん100時間超え残業もそうですし、サービス残業なんてこのご時世いい炎上ネタです。
残業させないと仕事が回らず給料が払えない、残業代なんて払ってられないと言う社長は本当に多いんですけど、よく考えて欲しいのです。その会社は違法行為をしないと会社が回らないって言っているのと同じなので、オレオレ詐欺をしているどこぞの反社会性力と一緒です。
日常化し過ぎていて当たり前になっていて、社員も文句いわないで働いてくれるので問題ないと思っている会社は多いので、まずその当たり前が、法に触れていないかをしっかり専門家に確認してもらうべきです。
とある労働基準法の説明会で、一人の社長が「うちはまだ労働基準法を取り入れていないので、残業代も払っていないし、休日も働かせているが、労働基準法を入れるメリットとは何か?」と普通に質問していたのを今でも覚えています。世の中そんな社長、多いのではと思っている。
まずは法を最低限クリアしている事。
これがクリアできていない場合は、その後何をしようが、何を言おうが、大炎上は確定。もはや立ち直る事はできないまで燃えるでしょう。
そんな時は3ヶ月黙る他ないです。その間社内で当たり前のように横行している違法行為を見直し、調整しましょう。
言及はそれからです。
3)法律上クリアしている事をアピールしてはならない
炎上すると、
「法律上クリアしているので何の問題もない(ドヤァ」
と、あえて公式Webページへ身の潔白を記載する会社は多いのですが、残念ながらこれは大変な悪手です。
そもそも、法をクリアしているのは当たり前なので、そんな当たり前のことをわざわざアピールする必要はありません。
それをアピールするくらいなら黙りましょう。炎上しているときに大事なのは、「やってはいけない事をするくらいならまず黙る事」です。
炎上している時、世論は法律なんて全く知らない人の方が多いし、何なら違法行為でもない事で炎上することの方が多いです。
つまり、法が問題で炎上するよりも
「企業としてのあり方」
「社員の扱い」
この2点で炎上することの方が多いわけです。
なので法をクリアしている事は大前提ですが、クリアしているから大丈夫と言う事ではないのです。
まず何が燃えているかしっかり確認しよう

まず、世論が何を焦点として炎上しているかをしっかりと見極めます。可能であれば一人で見極めるのではなく、複数人で。例えばそれを社長一人だけで見極めると間違っている事があります。なので他の人の意見も聞く耳を持ちましょう。
龍角散の事例として
「社長のセクハラ調査で解雇」元法務担当部長が龍角散を提訴 - 毎日新聞
社長がセクハラの疑いがある
↓
セクハラを調査中の部長が解雇された
↓
炎上
↓
社長はそんな事実はない、セクハラされた本人は「セクハラなどなかった」と言っていると言い、さらに大炎上。
やってはいけない事の1を実施した結果大きく燃えました。
ここでは調査中に解雇されたので、世論は本当はセクハラあったんでしょ?って言うのが焦点です。
潔白だったなら第3機関に依頼して潔白を証明してから言及すれば確実に鎮火します。
なので、「セクハラに関しては調査中です。多くの方の気分を害してしまい申し訳ありません」という炎上中に最も使われるテンプレ返すのが吉です。
事実は認めません、でも気分を害した事は謝ります。
しかし、もし潔白どころが真っ黒だったら・・・。
これに関しては法を犯しているのでもう炎上は避けられません。炎上が避けられないと言うよりも法を犯したのだから責任はとりましょうね。
もう一つの事例として
カネカ騒動の「自己犠牲」 制度が充実していても「働きやすくない」実態 - ライブドアニュース
育休取らせる
↓
育休が終わった初日に転勤命令
↓
転勤を拒否は認めない
↓
やめるなら残りの有休消化も認めない
↓
世論炎上
炎上後、法的にクリアしているので何も問題はありませんと公式に発表。これはやってはいけないことの(3)を忠実に再現したため大炎上しました。
そもそも法的に問題ないのなら発表する必要はありません。
むしろ炎上の焦点は法ではなく、子供と母親にとって一番父親が必要な時期に転勤を命じ、転勤の拒否すら認めなかった点です。
これは法律上全く問題ないが、「倫理」、「人として」、「企業として」のあり方を問われた炎上です。
一番の解決方法はこの家族と和解することですが、企業として1個人のためにそんな甘い事ができるか!と言うスタンスを貫くのであれば、世論との「調整」を一切拒否する事になるので、やはり一番の方法は黙る事だったのではないかと思います。
世論との調整作業
何が原因で炎上しているのか、焦点がはっきりとすれば、あとは世論との調整です。
何度も言いますが「法」が問題で炎上する事なんて稀です。
言わなくてもわかると思いますが、法律が問題になったなら社会的に罰せられますので、炎上まで行くことの方が珍しいです。
むしろ法に問題がないが、「企業としての対応がゴミ」と言う理由で炎上するわけですから、そのゴミ扱いされた対応を企業がこれから変える事ができるのか、出来ないなら善処する事を検討するのか、その辺りを示す必要があります。
こうした法とは別の世論とのすり合わせ、これが世論との社会的な調整です。
炎上って、だいたい2割の割と暇な人が自分の正義のために活動して起こります。
残りの人は、本当はどっちが悪いかなんてまだわからないけど、2割の人がなんかすごいリツイートされてるし拡散されてるし、自分に置き換えて、こう言う事されたら絶対許せないので、これはきっと企業側が悪いに違いないといって釣られてる人たちです。
そもそも物事の真偽なんて当事者同士しかわからない事が多いんですけど、だいたいどの炎上案件も1つの方向からの意見のみで発生します。それに何の疑いもなく乗っかる人がほとんどです。
なので、最速で最良の鎮火は、その1つの方向となっている発生源との和解です。
それを企業として対応できるかどうかは別の話にもなりますが、もしそれが出来るなら発生源が納得して発言を撤回、または謝罪してもらう事が最良の一手となります。
例えば有給をとらせずに辞めさせられる
↓
和解し有給を買い取る
↓
本人が炎上を取り消す
↓
本人がもう取り消しているのにまだ炎上しているの?って言う自治厨のおかげで鎮火する
調整するとその後のネット上にもそれが掲載され、この企業はちゃんとしたんだなと残る可能性もグッと高まります。
調整なんてしてられるか
企業として1個人のわがままなど聞けないと言うのであれば、世論との調整は不可能です。
その場合は、インターネットに傷跡は残りますが、黙るしかないです。
沈黙する事で1クール罵声を浴びますが、大炎上することはありません。
どう言うことかと言うとですね、
炎上案件に言及、批判をしたとすると、その人はもう言及しない事が多いんです。何なら言及した5分後にはもうその案件のことなんてどうでもいいとすら考えています。
先ほど言った8割の人がこれです。
これが1クール目です。
その時、企業側が何らかの「やってはいけないアクション」を起こしてしまったとします。例えば、私たちは法を犯していません。証明はできないけど潔白です。とかね。
そうすると、1クール目に言及した「同じ人」が再度言及、批判、そして拡散します。
1クール目の時は興味のなかった人も、短いスパンで同じ企業名の批判を目にすると、1クール目よりも多くの人が言及し始めます。これが2クール目です。
同じように、2クール目よりも3クール目の方がさらに炎が大きくなっていきます。
しかし、1クール目で沈黙すると、少なくとも同じ人が何度も何度も言及する事はありません。ここで言及を続けるのは暇な2割の人です。残りの8割の人は、一度言及して次の燃料が投下されるまでまた同じような批判をする事は稀です。
調整ができない場合は、沈黙が最良の手ですが、それなりの代償がネット上に残ります。
批判された企業は、その問題に対して真摯に対応しない企業としてレッテルを押されます。何ならブラック企業アワードにずっとランクインしているコンビニもそうですよね。法的に問題なくてもやり方が汚いとかね。これって今はいいけど後々ボディブローのように効いてくるんじゃないかなって思いますけど。
と言うわけで、これらの事はひとまず炎上する前に頭に入れておく事が大切です。
もし事前に違法行為が企業内で常識化しているものがあれば、そこも今のうちに見直しておくと、この先炎上してもすぐに鎮火できるようになるでしょう。
時代が時代なだけに、今までやってきた常識を一度疑うところから初めて見はいかがでしょうか。
それでは、また。