10年前、そして10年後・API革命とWEBアプリ汚染が企業の命運を握る日
別に98で何かしているわけではないので、別段困ることなど一つも無いけど、物理的に起動しなくなってしまったのはちょっと悲しい事だった。
10年前のノートPCといえば6GBのCPU350MHz、メモリー64搭載、14インチモニターで、26万もするものだった。CD-RWを外付けで購入すると29万以上かかった記憶がある。
なけなしの給料で買った物だっただけに思い入れは強い。
インターネットの世界ではチャットやメッセンジャーといったコミュニティーが全盛期で、掲示板に何か書き込むだけでお金がもらえるといったサービスが存在していた。
そんな当時を振り返り、今後のインターネットの動きを考えてみたい。
少し長くなるかもしれないので、お時間のあるときの暇つぶしにどうぞ。
回線料金が月に15万とか貢献してました
最近パソコンを始めた人から見たら驚くことかもしれないが、昔インターネットは電話料金で繋がっていたのだ。それはこのサイトを見ている多くの方が経験している事かも知れない。
やればやるほど電話料金がかかる。
プロバイダも、各街毎にアクセスポイントを設置して、そこにつなげる仕組みだった。
だから出張などで回線を使う場合、その街にアクセスポイントが無ければ、市外にアクセスしなければならないため、市外通話料金が発生する。
当時テレホーダイと呼ばれるサービスがあり、夜23時から翌朝8時までは使いたい放題という夢のプランが存在していたのも今ではいい思い出です。
テレホタイムと呼ばれるその黄金の時間帯は、アクセスが恐ろしく集中し、インターネットに繋げない状態がよくあったものです。
それでもホームページ作成業を営んでいた私は、回線料金がかかってしょうがなかったのです。
月に電話料金20万とか見て驚きました。
回線速度も16Kbだった気がする。いや、56Kだったかもしれない。
詳しくは覚えていないけど、今の回線速度はADSLで50Mとか、光で100Mとか。
50Mって、キロに直せば50,000Kくらいですよ。
昔はアダルトサイトで、アダルト画像1枚を見るために5分とかかかっていましたからね…。
それが現在では月額5千円もあれば、高速回線でインターネットを使いたい放題。こんな時代に生まれてきたかったです。
ホームページ作成料金は1ページ単価が5万円の時代
当時のホームページ作成料金1件平均単価は50万以上ありましたので、回線料金の元は取れるという物でした。
ところが、ホームページ作成料金はNTTが突然6ページ位の格安パックみたいなのを出したおかげで苦しい時代もありました。
テレビCMで月々3千円程でホームページがもてます見たいなのを悔しい思いをして見ていたのを今でも覚えている。
CGIが普及し始めたころに形成は逆転。なんとか苦しい時代は抜けたかのように見えましたが、今度は『ホームページビルダー』が登場。
誰でも簡単に作れるようになったため、業者も知人に作ってもらったとか、友人が作ったとかで断られる日々。7年前位のことでしょうか。
このころは既にISDNの常時接続が誕生していて、回線コストがかからなくなった事で値下げ断行が結構あちこちで起こりましたね。
これから起こる問題の序章『ネットへの不参加者』
パソコンの単価は落ちる一方で、スペックをあげることで単価を上げてきた各種パソコン製造メーカー。
パソコンを自宅で必要とした場合、程ほどのスペックであればこのころからハードのみを見ると、3万もあれば作れる時代が到来する。
それでも各店頭で並ぶ金額は全く変わらないのだ。
ノートPCだって、店頭では今でも26万するものは存在する。
10年前と比べてスペックが違うという理由でです。
今でも私のパソコンは各パーツを寄せ集めて作られた物だ。
HDD40G、アスロン1.6GBのCPU。メモリー1023MB。CD-RWつきでOS料金を抜いた計算で3万円で組み立ててもらった。それにXPの価格を上乗せすれば出来上がり。モニターは買い換える必要は今のところないですし。
私の会社にはそういうスキルを持った人がたくさん居ることに感謝したい。
ところが今でも店頭に並ぶパソコンしか、存在しないという風に思っている人たちはたくさん居る。
Vistaを何も解らないまま買う人だってたくさん居る。
ハードの面の格差社会はここにある。
まだまだXPが動く低コストマシーンで十分だという事を知っている人と、高スペックマシンの購入を余儀なくされている、もうVistaしか無いと思っている人との差が生じている。
インターネット社会の歪はもちろんハードだけではない。
ネットから離れている企業との格差
ホームページを作成するときにもこの格差はよく見受けられる。
・とりあえず全て丸投げ
・きちんと参加し、どうやって運営していくべきかを考える企業
・文章やなにから全て作成し、一緒に作っていく企業
私は『とりあえず丸投げ』という企業様のご依頼はお断りさせていただいている。
それでは作ってもきっとその企業にとってお金をどぶに捨てる事になりかねないと考えているからです。
企業として売り出したい商品やサービスの宣伝をするのに、その宣伝を人にやらせてもあまり効果が無いと私は考えている。
先ほども言った『ホームページビルダー』がもたらした一つの問題はこのあたりで起こっていた。
友人知人が作れるから頼んだという企業のホームページの場合、ほぼ9割以上が、友人知人任せなのだ。資料を渡し、作って終わり。
さらに、企業側から『ここをこうしてくれ』という要望を全て取り入れてしまうため、恐ろしく人が来ないホームページになってしまっている事が多い。
少なくともホームページ作成を生業としている皆さんなら、なぜ人が来ないかなんて説明する必要はないですよね?
ホームページの上にある文章や、デザイン。配置、SEOまで、人を呼ぶためのノウハウがあってこそ書けるもので、デザインできる物です。
ホームページに関して丸投げするような、ネットの知識を得ようとしない企業の要望を100%叶えてしまうと人が来なくなるのは当たり前なんです。
例えば、企業のホームページなのにアクセスカウンターを付けるとか・・・。ネットを常に利用していたらこんな要望は決して生まれませんし、アクセス解析という名前まで出す業者すら居るのです。
だからこそ私はクライアントの要望に100%答える必要は無いと思っていますし、丸投げは受けません。
真剣に考えた末の要望ならなんとかしようとしますけどね。
ここで一番言いたいことは、ハードの面でもそうですが、ホームページ作成という分野ですら、とにかくネットを使用している人と、使用していない人の格差が広がっていっているということです。
今、確実にこの格差の溝は、どんどん深まって来ているのです。
APIがもたらした革命
字幕inというウェブサイトのお話ですが、今では字幕in株式会社が運営して言いますが、ちょっとまえまではさとるさんが運営していました。
個人で運営し始めて、商売として成り立つという理由から株式会社にしたのです。
膨大なデータベースを元に、様々な展開を可能にしたのが『API』です。
字幕inというウェブサイトは、最初このYouTubeのAPIを利用し、YouTuebで使われている動画に対して字幕を入れるというサービスが発祥です。
つまり、YouTubeの膨大な動画データを使って運営しています。
個人でも有意義なウェブサイトを作るためのチャンスとしてAPIは個人技術者を魅了します。
そして企業でもこのAPIに着目し、様々なサービスのAPIを使い始めました。
(APIに関してはこちらを)
私がAPI革命と言うのは、あくまで私が勝手につけたことです。
これはある特定の企業が持つデータ(API)を使って、一つの新しいサービスを提供するWEBサイトととして、なにかしらの利益を得る事ができることを意味しています。
それは一つの革命のような気がするんですよね。
本家(API提供元)が提供しているウェブサイトのサービスのデータが、APIとして使える状態になっているわけですから、当然本家WEBサイトが提供するサービスが基本です。
でも、APIの可能性は、本家では無い面白いサービスを作り上げることにあります。これによって人気を集めることができれば、これこそ革命と呼ばずなんて呼べばよいのでしょうか。
下克上とも呼べるAPI革命
今のところAPI提供元以上の人気を集める劇的なサービスはありません。
ですが、はてなAPIを利用して、『これはひどい』等のサイトが、その分野で一番になることはありえます。
(はてなブックマークの中から「これはひどい」エントリーを取り上げて、Digg風に表示したサイトです。はてブで「これはひどい」タグを付けると投票としてカウントされ、コメントを書き込むとコメントとして反映されます。はてな認証APIによる投票にも対応しています。)
その分野で一番になれば、もうそれはAPI革命です。
いつかはAPI提供元を凌駕するようなサイトは出てくると言える。
APIに握られる命運
すこしAPIとは離れるが、ニコニコ動画という動画サイト。
少し前にニコニコ動画がサービスを停止した。
停止したのが直接的な原因はサーバーへのアタックだと公表されました。
この時ニコニコ動画は、動画の閲覧数があまりにもすごいという理由から(理由は様々な憶測が飛び交っている為、間違いないと言えません)YouTubeからの動画の配信を禁止されてしまった。
動画はYouTube動画を使用していたため、YouTubeから動画配信を禁止されると、サイトは運営できなくなる。
実はニコニコ動画が停止した原因は動画禁止によるものとも考えられている。
どれだけ人気が上がろうとも、APIを使用している限り、その提供元が配信しないと言ってしまえばそれで終わりますし、その提供元がWEBサイトを閉鎖すれば終わります。
今後もAPIを利用したサービスはぞくぞくと誕生すると思いますが、そのサイトが驚くほど収益を上げるようになっていた場合、停止されると大きなダメージを受けることになるでしょう。
字幕inが、ニコニコ動画と同じようにYouTubeから動画配信を停止された場合、どうなるかは考えるまでもありません。
これこそがAPI革命による、提供元に『命を預けている』という一つ目の命運です。
ウェブアプリケーション汚染
先ほど記述したとおり、回線スピードがどんどん高速化されたことによって、すばらしいウェブアプリケーションが誕生している。
例えばあなたが使っているエクセルというMicrosoftのアプリケーションも、今ではインターネット上で行えるサービスが存在する(今のところまだ低機能)
YouTubeの話はしつこいが、ここでも動画の編集アプリケーションをWEBで提供している。製作元はphotoshopや、illustratorでおなじみのAdobe
です。
Adobeは今後photoshopをWEBアプリケーション化させると公表している。
もしもphotoshopがWEBアプリケーションとして動くようになり、市販ソフトが無くなったら一体どうなるのだろうか。
photoshopを使うためにそのサイトにアクセスし、画像を編集することになるだろう。
10年後にもなれば、確実に今パソコンにインストールされているあらゆるソフトがインターネットのWEBサイトで使えるようになる。
これがウェブアプリケーション汚染の第一段階です。
WEBしか無くなったとき
今後どうなるかは全く持って予想できませんが、万が一今使っているエクセル、ワードなどを、Microsoft自身がウェブアプリケーションでのみ提供し始めたらどうなるだろうか。
アプリケーション自身をMicrosoftのサーバーに置き、ファイルは全て自分のパソコンに保存するというシステムが考案されている。
事実Gmailが既にそれを採用している。
システムはGoogleを使い、メールの内容は皆さんがお使いのアウトルックエクスプレスやサンダーバードに流すという流れです。
WEBアプリケーション汚染率70%を超えた時
このWEBアプリケーション汚染率。
日本では現在は未だ1%以内と言われている。
これが万が一70%を超えた場合。
恐ろしい事が起こり始める。
エクセルや、ワード。
企業間で様々な情報のやり取りをしているこの二つがもし、今日この日をもって使えなくなったらどうなるだろうか?
壊滅的なダメージを受ける企業が居るのは間違いありません。
それがもし、WEB上のアプリケーションを利用するとなれば、その提供元に命を握られているのと変わらない。
そのアプリケーションは提供もとのサーバーにあるわけだから、サーバーが停止したら使えないのだ。
また、回線が無ければ使えないのだから、電話線を切られるなどのいたずらをされた日には全てが使えなくなります。
今後10年で、どんどん便利と無料化が実現していきます。
エクセル、ワードに変わる同等のアプリケーションをGoogleが提供したら使う人が居るかもしれない。
MicrosoftVista内で、Googleデスクトップ検索が正常に動作しないと言うことでGoolgeはかなりご立腹だ。
OSを破壊する構想も考え出したとも聞いた事がある。
これまでの10年では考えられなかったような企業としての命運を、今後はどこかの企業に握られる可能性が高くなってきたんです。
企業側もこれらを提供する側に回るか、それとも提供される側に回るかで、大きな差が生じるでしょう。
その分、ユーザーからしてみると、便利なものはどんどん生まれる。
一ユーザーとしては、ほんとにこれからが楽しみでしょうがない。
ただ、横にそれてみると、政治によってネットに対する馬鹿げた規制が発生しつつもある。
ブログの著作権問題から、ダウンロードは駄目だとか、回線の送受信量が多いと有料とか、ゲーム内のお金に税金が必要だとか。
出来ればそんな物にだけはネットの流れを邪魔されたくないと願う。