デザインや使いやすさよりも、はるかにSEOやSEMにお金が流れ易いジレンマ
こんな事をいうwebデザイナーに会った。
大事なのはデザインではない。使いやすさもおまけだ。アクセス数の高いホームページで、リピーターを引き付けるサイト。そんなSEOやSEMを歌う連中にばっかりお金が流れていって、デザイナーはどんどん食われていくんだ。もうダメだ。webデザイナは。
つまり
- 露出回数を上げるスキル
- リピート力
なかなか興味深い話だった。
webデザインとはなんなのか
制作を「依頼」する側にある欲求は実にシンプルだ。
- 「コストがかからず」
- 「カッコ良く」
- 「見やすく」
- 「売り上げが上がり」
- 「問い合わせがバンバンくる」
こんなサイトをご要望だろう。
制作に関して一番厄介なのは、売り上げを上げたいにも関わらず、ユーザーが嫌うものを平気で入れようと無茶をするところだ。
例えばトップページでいきなり音が鳴る、なんて、馬鹿げた事を未だに要求する企業はいる。
コレによって膨大な損失を出すにもかかわらず、だ。
ユーザーが企業の商品を見たいだけなのに、20秒間ものFLASHムービーを見続けなきゃならないというライバル企業からしてみたら腹筋が壊れるくらい駄目なサイトも、まだまだ大量に存在する。
こうした企業の要求をwebデザイナーは回避する事が出来ず、言われたままの制作をした結果、アクセス数があつまらない、売れないサイトが量産されていく。
また、知り合いに頼む、web制作の素人社員に頼む、という、企業の存続そのものが危うい事態になりかねないケースもたまにある。
さて、話を少し戻すと、企業側としての考えの1つに「デザインは出来て当たり前」というのがあります。
制作を依頼する側には、ピクセル云々、CSS云々、HTML云々なんていう話には一切興味などなくて、要望どうりのデザインになって、FLASHがバーンで、面白いサイトになるかどうかに全ての興味が注がれています。
しかも、どれだけ要求しようとも、コンテンツについては一切考えてくれないにも関わらず、アクセス数が何故か膨大にあることが前提で話が進みます。
そしてこの業界の基本ですが、アクセス数が無いのは制作会社の力量が無いからと、制作を依頼した企業は考えるのです。
つまりほとんどの企業は
webデザインは比較的どうでもいいと思っています。
だから無茶な要求も簡単にしてきます。
優れたデザイン、優れたUIによる恩恵よりも『アクセス数』という言葉のインパクトが強い
例えば、webサイトのロゴ、タイトルが「文字」か『画像』かで、リピート率が全然違うのですが、そんな当たり前の事すら守られないケースがあります。
配色とスペースで、高級感を持たせる事ができるのですが、そうした技術を求められる事はあまりありません。
トップページでいきなりFLASHのローディングが開始されると、たとえskipがついてても再訪問する人が激減します。
色がベタベタの明るい配色を使っていた場合、目が疲れて文字を読んでくれるユーザーが激減します。
ユーザーは比較的、上に配置された横長メニューを見終わった時点で一度そのサイトを離れる傾向にありますが、その上の横長メニューが全て企業の概要や、企業理念などが配置される事が多い。そういうのはサイドメニュー、フッターに追いやっておくものなのに、一般企業の多くは企業理念が大事。売り上げよりも。
優れたUI、優れたデザインは、それだけで十分な集客能力があり、リピーターに直結するのですが、こうしたものを「制作前」の段階で理解してもらうのは不可能に近いのです。
そしてそういった顧客を相手にしているweb屋さんは膨大にいると思いますが、こうしたクライアントは、基本的にwebデザインというものを語っても理解してもらえないケースが多いかと思います。
そうなると、今度はSEOやSEMといったアクセス数に直接関わってくるサービスのほうにクライアントは興味を持ちます。
お話する方としても、
『このデザインは凄いんです!とにかくデザインが凄いからサイトも凄くなります!』なんていう意味のわからない提案よりも、『このSEOによってアクセス数があがります!きっと!たぶん!』のほうが、販売し易いのです。
優れたデザイナーが、優れたSEMスキルを必ずしも習得してるわけではありませんし、その逆もまたしかりです。
私からしてみると、アクセス数を出すのなんて簡単だと思っていますが、デザインは難しいと思ってます。きっとその逆もあると思います。
つまりアクセス数を稼ぎ出すSEO、SEMに優れたweb屋さんのほうが、優れた技術を持つwebデザイナーよりも、はるかに稼ぎやすく、お金が流れ易いということになります。
こうなってくると、純粋にwebデザインの単価は落ちる一方で、集客技術の単価が上がっていきます。
コレこそが、webデザイナーのジレンマとなっていると言える。
デザインがしたいのに・・・どうしたらいい?
企業がデザインを比較的重要視しないかいぎりこのジレンマが消える事はありません。
個人的に思うことですが、私も実はデザインよりも集客力、いわゆるコンテンツを作れる人材の方がIT向けだと思っています。
そもそもwebデザイナーさんは、webデザインにこだわらず、基本的なコンテンツをしっかり考えるくらいまでのスキルが求められている時代と感じていますし、そうしなければ今後つらい人生を歩む事になりかねません。
『webデザインが出来る』っていうのは既に特別な事ではなくて、むしろ普通。
収益は、一切CSSがかけなくてもアクセス数を集められる人に対して発生し易いのです。
CSSの技術に対等な対価が発生する日は、もしかしたらこないかもしれません。web制作に本気出す!といってCSSの本を買いあさってきた日が懐かしいです。
なんとなくですが、デザインに対する対価が下落していき、最終的には一部のデザイナーのテンプレートが世の中を占めるのかな、なんておもっちゃったりなんだり。既に無料ブログ業界がそうなっているわけですし。
私にはデザインだけで食べていける未来がまるで見えません。
みなさんはどう感じていますか?
それでは、また。