iPhoneアプリ有料化で批判殺到|食べログは何をミスったのか
今回食べログアプリがやらかした事は、多くのユーザーに嫌われ、アプリを消してしまう人まで増やす結果となった。
一体何が起こったのでしょうか?
9月の食べログアップデート炎上事件
もはや有名な事件なので、すでにご存知の方も多いかと思いますが、食べログがやらかした事で報道されている内容は次の一点。
というものだ。お店検索の検索結果を点数順、人気順にソートできていたが、それを月額315円支払ってくれるプレミアムユーザー限定の機能にするため、利用できなくなります。
これがきっかけで鎮火不能のレビュー炎上となった。

もはやこのアプリすごく良いという声は何処からも聞こえてきません。
実際に使って見るとわかりますが、これまで使えた機能が奪われたので「iPhoneアプリ」としてはかなりいらないアプリにまで落ちました。

この画面の上部、『人気順』と『点数順』の機能が無くなったのです。

このように、ログインを勧められます。これまでの食べログの機能を使いたい場合は、同時にプレミアム会員になり、年間3780円ものお金を支払わなければならなくなりました。
企業として、集金、マネタイズは非常に重要です。実際にお金があるからこそサービスが存続し、より機能的なサービスを提供していくためには、必要不可欠だからです。
しかし食べログを運営しているカカクコムがやらかした今回のアップデートは、明らかにユーザーを切り捨て、その上で嫌われる事をしてしまいました。
なぜなら、カカクコムがやらかした事は、実はこれだけではないからです。
食べログがやらかした事
1)無料だった機能を超高額にした
2)iPhoneアプリユーザーのみから集金をしようと企てた
3)iPhoneユーザーが、ブラウザから食べログを使う事を阻止しようとした
4)iPhoneユーザーのほとんどが、突然現れるユーザー登録が大嫌い
5)食べログの生命線であるレビューをくれるユーザーを切り捨てた
以上の5点です。
一つ一つ順を追って考えて行きます。
1)無料だった機能を超高額にした
かのヤコブニールセンが示すとおり(iPhone Apps Need Low Starting Hurdles)iPhoneユーザーは、ほとんどのアプリを断続的に利用するという結果が出ています。
つまり、使わない月もあれば、使う時もあると言う事です。
特に食べログの場合、外食しなければ使う必要はありません。しかし、継続率の高いものである事は確かです。これらは外食に出かける限り、使われる可能性があるからです。
ただし、こうした断続的で、いつ使うかわからないソフトの『ある一部の機能』に対して、年間3780円支払う人というのはよほど食べログを使いまくる人で無い限り、まずありえません。
考えただけでわかります。
こうした月額請求というのは、月に一度も利用しなくても315円請求される、超高額アプリとなる原因となるのです。
2)iPhoneユーザーのみから集金しようとした
かなり大事な部分ですが、この『人気、及び点数ソート機能』は、一般的なPCブラウザを使ってアクセスし、利用する分には、無料で使えるのです。
にもかかわらず、その機能が月額になった事でユーザーが激怒した感じが否めません。
ただ、iPhoneアプリを使うことで、PCよりもはるかに便利なサービスになるのは周知の事実です。
現地からGPSを使って周囲を検索する事は、それだけで特定のユーザーにとって有料の価値はあるかもしれません。しかし、アプリの本来の価値はその便利な機能が使えるという部分であり、この場合、アプリを購入(一回きり)であれば、かなりのユーザーを獲得できたかもしれませんね。
3)iPhoneユーザーが、ブラウザから食べログを使う事を阻止してる
ユーザビリティを積極的に破壊し、ユーザーからそっぽを向かれるようになった原因の一つ。
実はiPhoneのブラウザであるsafariを使えば、今回有料となった人気、点数ソートを無料で使うことが出来る。
ものすごい不便にはなるが、ブラウザから使う分には無料なので、そっちを使って調べ物をするのが妥当な解決策に見える。
ところが、このブラウザでこの機能を使おうとすると、以下のようなポップアップが『毎回毎回』出現する。機能自体はこのポップアップを毎回毎回消せばつかえるのですが、いかがなものだろうか・・・。

要するにブラウザを使うなら、アプリの方を使いなさいと促してくるのです。
これまで、全く不便ではなかったアプリの時は、みんな『あぁそれならアプリを使ってみるか』となっていたが、今回はクリティカルなソート機能が、ブラウザとアプリで無料、有料の差があるために、ユーザーにとっては、これ以上ないほど腹立たしいポップアップとなってしまったのです。
4)iPhoneユーザーのほとんどが、突然現れるユーザー登録が大嫌い
先ほども紹介したヤコブ氏のリサーチの中に(iPhone Apps Need Low Starting Hurdles)あるピザ屋検索アプリについての調べが掲載されています。
以下のアプリを起動した時に、「Demo the app」をタッチする事で、このアプリの本来の検索機能が使えるのですが、実際は、誰一人その文を読まずに、そっとアプリを終了してしまったという結果が出ているという事です。

ヤコブ氏の見解は、アプリを起動した瞬間にこの画面が現れた事が失敗であり、一度きちんと機能を使わせてから出すべきだと言うお話なので、今回のお話とは若干のずれはありますが、多くのユーザーにとって「まだ知らないアプリのユーザー登録」は、かなり最悪なUIとなります。
ここまでの問題点である『今まで使えていた機能が有料になった』という問題は、あくまでも今まで食べログを使っていたユーザーの問題です。
しかし、有料後から初めて食べログアプリをダウンロードしたユーザーにとって、『人気順ソート』『点数順ソート』は、PC版すら使った事がない人にしてみると、見た事も、使った事もない、どんな便利な機能なのかも全くの不明という『システム』です。
はたしてユーザーは、この未知の領域の機能に対してお金を毎月かけたいと考えるでしょうか?
ほとんどのユーザーはこの時点でそっとアプリを終了すると言えます。
5)食べログの生命線であるレビューをくれるユーザーを切り捨てた
食べログがすばらしいといえる部分は、ユーザーが各地のお店を評価しレビューした情報を『閲覧』できる事にあります。
つまり、月額有料のプレミアム会員よりも、はるかに『レビューする人』こそが、食べログの生命線となります。
なぜならレビューする人がいなければ、食べログを見る意味もなければ、価値もない為、プレミアム会員になど誰もなろうとは思わなくなるからです。
ところが、今回このレビューする人を激怒させてしまいました。
有料にしたからとか、機能を奪ったからとか、そんな話は実はどうでも良くて、事実として『レビューしてくれる人をおろそかにした』という事です。
実際にiTunesでのレビューには、こうした貴重なレビュアーを激怒させてしまったと言うことがわかるほどの皮肉たっぷりのレビューがアプリに対してつけられています。
食事のレビューをする人にとって、アプリのレビューなど朝飯前です。
今回、iTunesのレビュー炎上は、こうしたレビュアー達を怒らせた証拠でもあるのです。
今後どうなる?
以上の事を踏まえた上で、カカクコムさんは今回の騒動を重く受け止め慎重に対応を進めていくとの事でした。
こういう、不評をどのように切り替えていくかと言う点がマーケティングにおいて非常に参考に成る場面なので、もう少し見守って行きたいなぁと思います。
私の予想ではわざわざ便利な機能を削ぎ落とし、それを月額に変更すると言う無茶はしないと思うのですが・・・どうなんでしょうね。
みなさんも有料化にはくれぐれも慎重に。
それでは、また。